上越国境付近 栂ノ頭、コシキノ頭、木戸山、新行山 2010年3月28日

所要時間 遊歩道入口−−尾根取付−−1060m肩??−−栂ノ頭−−コシキノ頭−−1???m峰−−1???m峰−−1???m峰−−木戸山−−1???m峰−−新行山−−温泉−−遊歩道入口

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 群馬北部の四万温泉付近にはいくつか未踏峰があるが、栂ノ頭やコシキノ頭はマイナーでなかなか面白そうな山であり以前から歩いてみたいと考えていた。2年位前の3月終わりにDJFが栂ノ頭、コシキノ頭、木戸山、新行山とループを組んで日帰りで周回しており、それによると思ったよりも雪解けが早くて麓では全く雪が無かったという。今年は残雪が多いのか少ないのか知らないが、地域的に考えればある標高以上は笹薮に違いないだろうから雪があるうちに登るのが得策で、3月中に出かけることにした。ただ、この週は平日の天候が悪く下界では雨が何度も降り山では新雪が積もったと考えられる。気温が低い日が続いて日中でも山の雪は溶けなかっただろうから新雪ラッセルの確率が高く、相当体力を搾り取られるだろう。また、寒気が入って天気は下り坂でお昼くらいから雨か雪の予報で、山では確実に雪になるだろう。雲に入ってガスられて視界が無くなる可能性もある。今回はなだらかな稜線も含まれるので視界が無いのはリスクが高い。DJFが歩いたときには天気も雪質も最高だったそうだが、はたして今回はうまく行くだろうか。最悪でも栂ノ頭、コシキノ頭くらいは打ち落としたい。

 土曜日は会社の営業日で日曜のみ休みなので土曜夜に出発、時間を気にすることなく渋川伊香保ICで降りて四万温泉に向かう。夜なので周囲の山の様子は分からないが道路付近には全く積雪が無い。四万温泉が近づくとやっと少しだけ雪が現れたが登り始めは間違いなく無雪の斜面だろう。標高が低いうちは笹は登場しないと思うが高いところは雪が欲しい。

奥四万トンネル西側入口 誘導入口の林道。車止めあり

熊がいて当然だろう このときはまだコシキノ頭が遠望できた

 奥四万トンネル入口左に遊歩道入口となる林道があり、車止めが置かれているのでトンネル脇の駐車スペースに車を置いて寝た。5時前になってワンボックス車が1台やってきたが釣り人だった。軌道跡を上流に向かうそうだがワカンを持ってきたという。さて、この雪の状況だと相当上流に行かないと雪は現れないかもしれない。こちらは新雪が予想される稜線まで上がるのでスノーシューを担いでいく。夜が明けて周囲が明るくなると白い山々が姿を現した。稜線上の積雪量は問題ないようで藪漕ぎの心配はなさそうだ。コシキノ頭の鋭い姿がかろうじて見えているが、ここから見ると「あんなピーク、本当に登れるの?」と心配になるような尖り方だ。

 今回の周回コースは先に栂ノ頭に登るか、先に新行山に登るか悩むところだが、単純に車に近いところから取り付くことにして先に栂ノ頭に登って反時計回りとした。しかしこれが失敗で、コシキノ頭西側の1???m峰から木戸山までの南北に連なるピークは、南側の雪は日当たりが良くてそこそこ締まっていたのが北側は締まりきっておらず沈み、時計回りなら登りで雪質がよく沈みにくかったのが、反時計回りでは登りで沈み込みに難儀した。よく考えればこのような事態は予想できたはずで今後の反省材料となった。

夏場はヒルが出るらしい 熊避けの鐘(ガスボンベを切断したもの)

 尾根取り付きはトンネル脇よりも少し遊歩道を進んで770m付近に落ちてくる尾根の方が傾斜が緩そうなのでそこまでまずは歩く。遊歩道入口は入山禁止の看板が出ているがこちらは山登りが目的なので無視して進む。熊に注意の看板の他、夏場はヒルが出るようでヒルにたかられないよう食塩水の置き場もあった。もちろんこんな時期には置いてないけど。

ここから尾根に取り付く 藪無しで歩きやすい
猿の足跡 そろそろ1060m肩

 目的の尾根にすぐに登場、カラマツ植林帯で下草はなく藪漕ぎ無しのスタートだ。踏跡は無いが藪が無ければ問題ない。上方で何やら鳴き声がすると思ったら猿の群れがいた。私の姿を見て尾根上方に逃げていったが逃げ足は速かった。尾根が右に曲がると尾根が広がって自然林となり、僅かに雪が残り、その上に猿の足跡が残されていた。この尾根を登っていけばトンネル上から続く主稜線に出るのでひたすら登るだけ。まだ標高が低いので予想通り笹薮は登場せず、1060mで稜線に出た。

1060m肩 同じような風景が続く
熊棚 石碑? 人工的な直方体の石

 稜線はたくさん目印があるかと思ったら全く無いわけではないが数は少ない。期待していないし頼ることも考えていなかったのでどうでもいいことだが、あまり登る人はいないようだ。DJFも巻き巻き氏もこの尾根は通っていない。尾根上も落葉広葉樹林で藪は皆無で歩きやすく、雪が無くても全く問題ない。途中、熊棚を発見、まあ、このエリアなら熊がいて当然だろう。標高1150m付近で何かの石碑らしい直方体の石が横に寝ていた。

1190m肩の色が抜けたテープ 1230m峰先の細い尾根

 1190m肩に出ると赤から色が抜けた黄色のテープがお出迎え。この付近から雪が続くようになるが厚さは1cmにも満たないだろう。溶けかけのザクザクの雪かと思ったら意外に締まっていて歩きやすい。稜線までこの調子ならいいのだが。1230m峰付近で低い笹が出てくるが、これは密度が低く無雪期でも全く問題ないだろう。その先の鞍部への下りは少し尾根が痩せているが危険というほどのことはなかった。

1230m峰を越えると低い笹が登場 少しの積雪で笹が顔を出している
標高1400m付近の露岩帯入口 露岩帯を抜けると再び尾根が広がる

 再び尾根が広がり、今まで同様の落葉樹林に薄く低い笹に少しばかりの積雪が続き、写真を撮影していても特徴が無いのでどこで撮影したか特定するのが難しい。なおも落葉樹林が続いたが行く先に緑の塊が見えてきた。先日の南会津の土倉山の経験からすると、広範囲で落葉樹林が広がる中で常緑樹が茂っている箇所は露岩か痩せ尾根か急傾斜の稜線であった。地図を見たのでは読み取れないが今回もそのパターンであろうか? 標高1400m付近で現場に到着すると予想的中で露岩だった。ただしスノーシューを履いたままでも直登できないような厳しさではなく、段差を越えていけばどうにかなりそうなのでそのまま突入。ただ、先は見えないので切れ落ちた箇所が出てきたら戻って下を巻く必要があるが。微妙に巻いたりと歩きやすいルートを拾って、切れ落ちた場所に出くわすこともなく広い尾根に出た。距離にすれば20mくらいだったろうか。適度に変化があって楽しめる程度の稜線で助かった。

笹が目立つようになると傾斜が増す 傾斜が緩むと山頂は近い

 その後は再び広くて歩きやすい落葉樹林の尾根に戻り、スノーシューを効かせてグングン登る。雪は徐々に深くなってきたが南向きの尾根だからか、予想に反してよく締まっており僅かしか沈まない。この調子の雪質が続けば今日は楽勝だろう。標高が1500m付近になると尾根がはっきりしなくなり、かなりの傾斜の斜面を登っていく。それなりに積雪はあるが笹が顔を出しているので、ここまで登ると無雪期は笹薮地獄らしい。この頃になると雲の高さに達したようで周囲にガスが漂い始めた。こりゃまずい。この後に登場する緩斜面で迷わずルートを辿れるか心配になる。私の場合、残雪期は基本的に好天時しか入山しないので、ほとんどの山では視界が効いて先の尾根の様子が見えるので、地図を見るまでもなく正しいルートが判断できることがほとんどだ。だから歩いている最中に地図と方位磁石を引っ張り出すことは滅多にない。まだそこそこ視界があるが、これ以上ガスが濃くなると精密な読図が必要になるだろう。今後の天気の様子を見てルートをどうするか考えるか。

栂ノ頭山頂 栂ノ頭から西の稜線

 傾斜が緩んで栂ノ頭山頂かと思いきや、霧の先にボーっと上り坂が続いていた。そのまま直進すると左手は広い緩斜面が登場、こりゃ下りで迷いそうだが自分の足跡が残っているので大丈夫だろう。そして平坦地に出て谷を挟んだ北側の稜線がガスの切れ間から見えるようになった。ここが栂ノ頭の山頂だ。群馬県内なのでGさん標識があると思ったら山頂標識は一つも無くテープ等の目印だけだった。DJFのピンクリボンは見当たらない。DJFの写真と見比べたがJDFので赤い絶縁テープは私の写真d根は一番下に付いた黄色いテープのようだった。積雪はDJFの時より50cmは少なく見えるのでDJFのリボンは雪の下ということはないだろう。達筆標識は雪の下だろうか。

 ガスは徐々に濃くなってきており間違いなく天候は下り坂ではあるが、まだ大して疲労は感じないのでそのままコシキノ頭へと進むことにする。最低限、コシキノ頭までは行こう。ピストンなら自分の足跡を辿ればいいので濃霧でも確実に下山できる。

稜線を西に進む 1537m峰付近。視界が無いと進路に悩む

 ここからはほぼまっすぐ西に進んでいく。なだらかで広い稜線で、天気が良ければ右手に上越国境の山々の展望を楽しみながらルンルン気分で歩けるのだろうが、残念ながら今は霧に閉ざされて周囲の山は見えない。視程は最初は100m以上はあったが徐々に霧が濃くなり、1537m峰付近の緩斜面帯では50mくらいまで低下してしまった。このだだっ広い場所で視界がないと進路の選択に苦労し、ここからは首に方位磁石をぶら下げて頻繁に地形図を引っ張り出しては方位磁石で進路を確認する作業の繰り返しとなった。1537m峰は南の尾根の方が主尾根のように見えるが、直進が正解だった。少し歩くと尾根らしくなって一安心。登りにかかればとにかく高いところ目指せばピークに到着できるので地図も磁石も出番は無しで、黙々と登っていく。西への稜線に入ってから雪質が悪くなり、上部に乗った新雪がクラストしきれずスノーシューでも体重をかけると数cm沈むようになった。たかが数cmでも新雪のラッセルと微妙にクラストして体重をかけた瞬間に沈むのとでは体力消耗の度合いが違う。体力温存で歩幅を狭めて登るようにする。

無事主稜線に乗る 山頂手前で左に進路が曲がる。山頂は見えない

 1580m峰ではほとんど視界が無くなり、目の前にあるはずのコシキノ頭は影も形も見えなかった。何も考えずにあるくと北の尾根に入り込んでしまうが、今日は頻繁に地形図で進路を確認しているので迷うことなく左の雪庇上を行く。やがて上り坂となると小さなピークが見えてきた。上部斜面は笹が出てしまっているが、まだ残雪が続いているので笹の上は歩かなくていいようだ。最後は短いながらも急斜面をよじ登ることになり、新雪が弱層で崩れてスノーシューでもズルズルと滑り落ちるので、ピッケルや立ち木の助けで登りきった。

山頂直下の登り コシキノ頭山頂の目印

 てっぺんは栂ノ頭と同じで山頂標識は皆無で目印だけだった。深いガスで展望皆無、周囲の木には霧氷が付き始めていた。僅かに雪が降り出し、やっぱり天候は悪化している。少々疲れたのでしばし休憩。今後の行動を考えた。ここまでの行程は全行程の4割くらいは来ているだろうか、時間的には木戸山は充分射程距離内だろう。問題は天候で、どの程度悪化するのか判断できない。ただ、先週の真名板倉山、貝鳴山とも吹雪の中を登っており、降雪の中を歩けないわけではない。最大の難関は雪よりも視界が無い中で正しい尾根を辿り続けられるかどうかで、こればかりは自分自身の読図能力をどう評価するかにかかってくる。少し考えたが、せっかくここまで来たのだから木戸山を諦めるのはもったいないとの考えが優勢になり、リスクはあるが計画を続行することにした。

山頂西側の下りに入る 石楠花が雪面から出ていた

 コシキノ頭から西に下る稜線は等高線が込み合っているのでスノーシューを脱いでつぼ足で下ることにする。どんな急な尾根が待っているかとビクビクしながら時々膝まで踏み抜きながら進んでいくと、意外にも大した傾斜ではなかった。ただ、尾根上は石楠花が顔を出しているのでスノーシューを脱いで正解だったようだ。思ったよりあっさりと西の鞍部にたどり着き、再びスノーシューを装着した。

コシキノ頭を振り返る。見えない 1644m峰へと登る
1644m峰 南西に向かうなだらかな尾根

 1644m峰までは登りが続くので読図の心配は無いが、軟雪が続いて体力を搾り取られた。たかが標高差100mなら通常なら楽勝だが、今は息が荒く時々足を止めて息を整える必要があった。ようやく1644m峰に到着したが、ここからの下りが難関だった。既に視界は50mを切っており尾根の様子は全く分からなくなっていた。こうなると緩斜面帯では地図で方位を確認して磁石の指し示す方向に歩くしか手段がない(地図付きのGPSなら別だが)。視界が無い中で先の分からない方向に歩くのは相当度胸が必要だが、進まないといつまで経ってもゴールに到着できないから前進あるのみだ。それにどうしてもルートが分からなかったら自分の足跡を辿って戻ればいい。

自分の足跡 木の上の雪からつららが

 かなり心細く感じながらも南西に向かって緩やかに下っていきながら限定された範囲ではあるが周囲の様子を注意深く観察し、尾根を外していないか神経を張り詰めてチェックし続ける。うまい具合に左手が切れ落ちていることを知り、以降はできるだけ尾根左側端を歩くようにした。ただ雪庇が出ているので寄りすぎに注意が必要だ。1650m峰の付近も緩斜面で尾根の様子が全く掴めず、方位磁石を頼りに方向を定めてまっすぐ歩くだけだった。ガスの中で歩いてこれだけ苦労するのに、KUMO氏は視界が数mしかないであろう夜中にこんな稜線を歩くのだから神業の持ち主だ。

登りにかかる 木が少なくなると尾根が掴めない

 下りでは散々神経をすり減らしてルートミスしていないか注意深く進んでいくが、登りになると適当モードに切り替えられるが、今度は体力的にきつい。この稜線は南北にピークが並んでいるが、下りとなる南斜面は日当たりが良く雪がそこそこクラストしているが、登りとなる北斜面で雪が締まっていなくて沈みながら登っていくので疲れるわけだ。これが逆周りだったら登りで締まって下りで雪が柔らかく膝への負担が少なくなったなぁ。まあ、いい勉強になった。

1730m峰 尾根がはっきりしたところ

 1730m峰に到着し、この下りが予想通り曲者だった。地図を見ると山頂直下は尾根の形状をなしておらずただの斜面で、ガスって視界がないときはランドマークが無くまことにやっかいだ。多少尾根らしき形状がないか西に進んでみたがずっと斜面が続き、最終的には地形図と磁石を信用してピークから真南よりやや西寄りに下っていくしかなかった。全く先が見えないのでだだっ広い斜面を下るのは相当な勇気が要る行為で、本当に大丈夫か?と何度も自問自答してやっと決行を決断。限定された範囲しか見えないが周囲にもっと高い場所がないか慎重に確認しながら進んでいくと、ようやく傾斜が緩んで尾根らしい地形になって一安心だ。鞍部に至ってもガスって先の様子は全く見えず、この先にピークが存在するかも見えず、直近の斜面をただ登るしかない。意外に尾根が広く尾根直上を登っているかも全く分からない。この登りも雪が締まりきっておらず体力を消耗した。

稀に目印があるがガスで気付かない 1650m鞍部

 どうにか1742m峰に到着、休憩しようかとも思ったが次の鞍部まで下ってから休むことにして歩き続ける。ピークからの下り始めも稜線がはっきりしないので、不安を感じながらも磁石の指す南の方に直線的に下っていく。左手の斜面の方が落ち込み方が激しく尾根を掴みやすいので、左に寄るよう心がけながら歩いていくうちに稜線の形状が明瞭化し、ガスの中でもルートが誤っていなかったと確認できた。その後も下りが続き、磁石を頼りに南に進み続け1650m鞍部を通過。登りに変わると雪が沈むようになって再び足が重くなり、大きな木の陰でたまらず休憩。この頃にはガスだけでなく雪も降り始め、何とも重い雰囲気だ。まあ、この濃霧だから雪が降っても視界に差は無く、積りさえしなければ問題ないが。雪の降り方は弱々しく、新雪が積もってラッセル地獄になることはなさそうだ。

相変わらずガスで視界無し 標高1700mで尾根が平坦になる

 再び歩きだすがいかんせん足は重く、時々立ち止まって息を整えて再び歩きだす繰り返しでペースが上がらない。これでも快晴で周囲の山々が見えれば疲れを紛らわすこともできるだろうが、近くの木以外は何も見えない状況が続いている。亀の歩みだが着実に高度を上げ標高1700mに到達すると傾斜が緩んでいくぶん楽になる。しかし帰りを考えるとこの地形は頭が痛い。というのは木戸山山頂から下山予定の東尾根は、このなだらかな稜線の途中から分岐しており、下り始めは尾根がはっきりしない地形で、今日のような視界が無い中で正確に尾根入口を探し出すのは非常に難しいからだ。GPSには各山頂の緯度経度しか入力してきていないので、尾根入口探索にGPSは使えない。たぶんこのガスと木に乗った積雪ではたとえ目印があっても判別できないだろう。過去の経験を元にした勘が頼りだ。尾根入口の探索は下山時にじっくりやるとしてまずは山頂を目指した

ここは空白です

木戸山山頂へと向かう
木戸山山頂 山頂標識とテープ(リボン)

 なだらかな稜線は緩やかに右カーブし、木が少なく水平で開けた尾根がしばらく続き、右に曲がる角度が大きくなるところに出た。地形図では東尾根分岐付近は特に尾根の曲が顕著なわけではないが、どうもここが臭い。帰りに下りすぎないよう東側に足跡を残して目印として再び山頂に向かう。緑の葉をつけた針葉樹が増えてくると少し傾斜が出てくるが大した傾斜ではなく、いったん平坦になって山頂かと思ったが、霧の向こうにまだ尾根が続いているような気配でGPSの電源を入れると山頂はまだ西にあった。高み目指してガスの中を登っていくとようやくピークらしい高まりに到着、少ないが(1つだけだったような)木に目印が結んであり、木戸山山頂に間違いない。下山直前に気付いたが保護色で目立たない山頂標識もあったが、これは今の雪面より2mくらい上にあった。Gさん標識は見当たらない。

 相変わらず濃いガスの中で展望皆無で、弱い雪が舞い続けている。雪の上にはトレース皆無で今週中に登った人はいないようだ。まあ、こんな山を狙う物好き自体が少ないだろうけど。ここに到着するまでにかなり体力を消耗してしまったが、この先はほぼ下りが続くのでよほど雪質が悪くない限りは途中でヘバることはないだろう。問題はガスで視界が無い中、下りが続く尾根を外さないで歩き続けられるかどうかだ。まだまだ高度な読図能力が要求される場面が続きそうだ。どこまで高度を下げると雲の層から抜け出せるだろうか。

ここから下り始める。全く先は見えない 無事尾根に乗ったと判明

 さあ、下山開始だ。緩やかな下りが終わって平坦な尾根になり、僅かに左へ曲がる場所(登りで目印に足跡を残した箇所)で尾根を外れて磁石を見ながらまっすぐ東へと下り始める。相変わらずガスで視程は50mほどであり、斜面にはほとんど木が無くまっさらな雪面が続き、このまま下って尾根が現れるのか全く分からない。磁石だけが頼りで、視界が限定されているが明らかに尾根から外れていないか左右の地形をチェックしながら直線的に下っていくと傾斜が緩み、どうやら無事に尾根に乗ったようだ。第1関門突破。

写真では判別不能だが稀に白い目印あり 尾根が狭い場所は安心

 樹木の枝をよ〜く見るとたま〜に目印がぶら下がっているのを発見したが、元々白なのか色が抜けて白くなったのか不明だが、雪とガスで周囲が白一色の世界では目立たず、あっても無くても同じような感じだった。もちろん、どこに導かれるのか保証は無いため目印を頼りに歩くつもりはないけど。

1552m峰(たぶん) 1552m下りの途中。広い斜面でルート不明

ここは空白です

正しい尾根に乗る

 1590m肩で進路が左に曲がるが、ここは地形に追随すると自然に正しい尾根に引き込まれた。ブナが生え僅かに笹が顔を出した尾根を進んでいく。1530mの平坦な尾根は1つ小ピークがあり1552m峰と間違えそうになったが、ピークを通過しても同じような尾根が続き勘違いに気づいた。それに高度計の表示が低かった。やがて足が重い登りが始まり、今度こそ1552mに間違いないと確信、てっぺんはピークらしい地形だった。この下りがまたいやらしく、尾根がバラけてはっきりしない斜面を標高差80m下らないと尾根が出現せず、このガスでは目視で尾根をとらえることはできないので再び磁石で方向を定めて慎重に下っていく。ブナ、シラビソが点在する斜面で一部笹が顔を出している。やがて広い平坦に到達、地形図通りでどうやら外していないようだ。しかし平坦地なので尾根の続きは全く分からず、これまた磁石で方向を定めて進んでいく。平坦地の南端が少し高まっており、その先に正しい尾根が続いていた。

1440m肩 1440m肩の下りは広い斜面&木が無く方向を失いそう
1342m峰 1342m峰先の熊棚。低いところにあった

 1440m肩で尾根は左に曲がるが、ここも地形と高度計で肩の位置を把握できた。ここで再び尾根が広がり、おまけに木が少ない雪原でガスった中では真っ白で方向感覚が狂いそうだ。方位磁石を見ながら真東に下ってくとやっと尾根らしい地形に戻って一安心。1342m峰を越えたすぐ先で低い位置に熊棚があり、ここで尾根が右に曲がるいい目印だった。

この目印が多い もう尾根を外す心配はない

 この先は尾根が細くなり外す心配は低くなって安心して歩けるようになる。同時に標高が下がって雲の層から脱出しかけているようで視界も良くなってきた。どうせならこんな分かりやすい尾根ではなく難しい地形の場所で視界が開けてくれればよかったのに・・・。唐松植林も混じってだいぶ人臭くなり、目印も良く見られるようになった。

新行山手前の尾根分岐 新行山山頂

 新行山手前で傾斜が緩くなり、左手に下る予定の尾根が見えていた。もう雲の層から完全に脱出し視界は良好、ビクビクしながら下る必要はなくなって安心。尾根分岐の僅か先でカラマツ樹林が開け、一番手前に三角点が埋まっていた。ここが新行山だ。山名事典記載の山なので山頂標識はなく、通常はただ通過するだけのピークだろう。目印はこの先に続いており、どこから登ってきたのかは不明だ。私の下ろうとする尾根はトンネル北側入口に出るのにちょうど良く、橋を渡れば車を置いた奥四万トンネル入口にたどり着くので無駄がない。

歩きやすい尾根が続く 標高が落ちると雪が減る
下部に沢が見えてきた 温泉宿にかかる橋

 この先はもうほとんど問題になるほど雪は無いのでスノーシューを脱ぎ、足を軽くして新行山を下り始めた。この尾根には目印は皆無だが藪も皆無で、歩きやすい落葉樹林が続いていた。標高970m付近で尾根が左右に分かれるが地形図を見て右に進む。落ち葉に覆われて気持ちのいい尾根で、850mで左の尾根に入らなければならなかったのだが調子に乗って尾根をまっすぐ下ってしまった。眼下に日向見川が見えてきた頃になってルートをミスってトンネル上部を通過してしまったことに気付いたが既に遅く、対岸の旅館に出る橋を渡って足湯がある駐車場に上がると観光客から奇異の目で見られてしまった。そりゃそうだ、こんなところに登山口はない。

池の奥の段差を這い上がった こんな注意書きあり

 標高が下がりすぎたのでトンネルまで登らなければならない。舗装道路は雪道より歩きやすいが樹林の土地の上より足への衝撃が強く、登りでは余計に疲れる。ジグザグに上がってトンネル入口に到着すると釣りにきていたワゴン車は既に消えていた。

 

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